9年

2004年1月17日
 今日で阪神大震災から9年。9年前、自分は中学3年生、受験勉強の真っ最中だった。被災地から遠く離れた愛知県でも結構揺れたようで(震度3くらい?)、家族や友人は目が覚めたらしいが、自分は全く気づかずに朝のニュースで高速道路の高架橋が倒れているのを見てえらく驚いた記憶がある。
 この震災から「がんばろうKOBE」というスローガンが生まれ、このスローガンをユニフォームの袖につけたオリックスはこの年リーグ優勝を果たしている。攻撃陣はイチロー、田口、藤井、二―ルらを揃え、投手陣も長谷川、野田、星野、平井、小林、野村など強力。仰木監督のマジックも面白いように当たり、洗練された魅力あふれるチームだった。「がんばろうKOBE」はこの年の流行語大賞を受賞しているが、オリックスの活躍がその最も象徴的なものだった。
 だが現在はどうだろう。石毛監督の早期解任、相次ぐ大量失点、2年連続の最下位。2003年を通じて明るい話題は、谷とYAWARAちゃんの結婚くらいしか思いつかない。よく1リーグ制にした方がいいんじゃないかと言う友人がいるが、彼が真っ先に削減する球団として名前を挙げるのがオリックスである。
 だがこのオフ、少しばかりチームを強くしようとする動きがみられてきた。ゼネラルマネージャーに中村勝広氏を迎えると、西武を解任された伊原春樹を監督に招聘。ドラフトでは日本ハムを希望していた柴田誠也(北海道尚志)を口説き落とし、村松、ムーアを獲得するなど例年にない精力的な補強をしている。中でも伊原監督の存在が大きい。もともと走れる選手が多いだけに、伊原野球によって得点力がアップすることは間違いないだろう。ダイエーは小久保と村松、西武は松井、近鉄はローズと上位3球団は軒並み主力が抜け、上と下の差が詰まった感はある。しかも今年からプレーオフ制度となったため、135試合の勝率だけでは優勝は決まらない。戦い方によっては、再び「KOBE」が熱くなる可能性もなくはないと思うのだが…。

 ここで神戸にまつわるトリビアを一つ。NBAのスーパースター、L.A・レイカーズのコービー・ブライアント。彼のファーストネームのつづりは「KOBE」だが、これは神戸が由来である。何でも彼の父親が来日したときに、神戸牛のあまりの美味しさに感動してつけたらしい。
へぇ〜。

自信

2004年1月14日
 いまや日本で最も注目される高校生となった平山相太(国見高校)。190cmの長身と、それに似つかわしくない柔らかいボールタッチが長所だということは素人の自分からもよく分かる。それに加えてセルジオ越後が言うには、ゴール前での落ち着きが際立っているらしい。高校選手権では注目が集まっていく中でも、その期待に完璧にこたえてみせた。準決勝、決勝でのプレーやインタビューでは貫禄すら感じた。
 わずか1ヶ月前、ワールドユースのエジプト戦で決勝ゴールを決めたときのインタビューでは、自分の目にはまだまだ頼りなく映っていた。おそらくチーム最年少ということもあって、遠慮していた部分も大きかったと思うが、高校の先輩である大久保嘉人(セレッソ大阪)のいい意味でのふてぶてしい態度と比べると、どうしても弱々しく見えたものだ。ところが決勝戦終了後、フジテレビのアナウンサーとのやり取りを聞いて、正直驚いた。「次に目標とする大舞台は?」という問いに対して「オリンピックって言わせたいんでしょ?言いませんよ(苦笑)」と強気に答えてみせたのだ。その口ぶりも、取材攻勢に対して嫌悪感を示すようなものではなく、少しいたずらっぽさを覗かせるようなものだった。
 高校時代の松坂大輔も、春のセンバツの時点では何となく初々しさの残る受け答えをしていたが、夏の甲子園、ドラフトの頃には質問を受け流したり、冗談で切り返したりする余裕が生まれていた。おそらく松坂も平山も、注目を浴び続ける中で結果を残すことで自信を深め、周囲に流されないだけの自分を作り上げたのだと思う。平山の態度の変化を見て、あらためて自信というものは人を大きく成長させるのだということを思い知らされた気分だ。


 最近サッカーのネタが多いですね(苦笑)。

もう少し…

2004年1月11日
 現在、修士論文の追い込み時期とあって、更新が滞っております。申し訳ありません。
 新聞では、各球団のスカウト会議の様子や、自主トレの模様など、徐々に野球関連の記事も2004年シーズンに向けてヒートアップ(?)してきました。
 色々と書きたいことはあるのですが、論文の提出まで少しお休みします。
 14日からはしっかり書くつもりなので、よろしくお願いします。

Simple is best!

2004年1月4日
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 年末にテレビ朝日で「朝まで生サッカー」という番組をやっていたので、何となく朝まで見てしまった。番組の内容は、セルジオ越後、ラモス瑠偉、釜本邦茂など著名なサッカー関係者や評論家が集まり、日本サッカーの現状について議論するというものだったが、先日の日記にも書いた「ストライカー育成プロジェクト」も議題の一つだった。
 そんな中、一人のサポーターが釜本氏に「どうすれば釜本さんのようなストライカーになれますか?」という質問をした。その問いに対して釜本氏は「たくさんボールを蹴ればいい」と答え、会場からは笑いが起こった。また、「シュート練習しなきゃ、上手くなんないよ」とも言っていた。以前、中日の落合監督も「(たくさん)バット振った奴には勝てないよ」と発言していた。落合監督は現役時代素振りをしすぎて、バットを置こうと思ったら手からバットがはなれなかったということもあったらしい。何も考えずにボールを蹴ったり、バットを振ったりするだけで上達するわけではないが、やはり量をこなさないことにはどうにもならない部分というものは確実に存在するはずである。
 おそらく、彼らのような超一流が言う練習量とは常人の考えよりも遥かにとてつもないものであるとは思うが、「量よりも質」ばかりが叫ばれている最近の風潮に一石を投じる発言であることは間違いない。
 上手になりたければ練習すればいい、そんな単純なことでも言う人が違うとやはり説得力が違う。

今年のMVPは…

2003年12月30日
 またまた更新が滞ってしまいました。申し訳ありません。

 気がつけばもう30日。今年も終わりです。契約更改もほぼ一段落し、野球界のニュースはめっきり少なくなりました。最近のスポーツ紙の一面は競馬、大晦日の格闘技の話題が多く、今日の日刊スポーツの一面は競輪でした。
 毎年、Numberがその1年に最も活躍したスポーツ選手に、年間MVPのようなものを贈っていますが、今年はおそらく水泳の北島康介選手でしょう。ひょっとしたら星野仙一前監督かもしれませんが、日本一を逃したので厳しいと思います。
 やや強引ですが、自分の中でこの1年のアマチュア野球MVPを挙げるとなると、野間口貴彦投手(シダックス)になります。春先のスポニチ大会、夏の都市対抗、秋のW杯とコンスタントに結果を残したそのピッチングは見事の一言に尽きます。来年のドラフトの超目玉としても不動の地位を得た野間口選手ですが、昨年の今頃はシダックスへの入社が決まったばかりで、ほとんど話題にもなっていませんでした。昨日のスポーツ紙にインタビューが掲載されていましたが、夏に大学を辞めたときは実家に帰って1ヶ月くらい野球もせずに暮らし、そこでもう一度野球をやりたいと思い直して社会人チームを探したと書いてありました。ジャイアンツの上原選手も、浪人時代に一度野球を諦めかけた経験があり、それをばねに大学で飛躍できたと語っています。野間口選手は高校時代から有名で、単純に上原選手と比較するのはどうかと思いますが、大学を中退して野球を諦めかけた経験が今年の飛躍につながったと思えてなりません。一度地獄を見た選手は強い、改めてそのことを感じさせる今年の活躍ぶりでした。

 今年、ドラフトで指名された選手についてもいろいろと書きたかったのですが、今日はこの辺で。新年からは心を入れ替えて、更新頻度を高めていくよう努力する所存です。

みなさま、よいお年を。

 結構前の話だが、少し気になる記事を目にした。

 日本サッカー協会は、点取り屋を育成するため18歳以下の選手をGK(ゴールキーパー)とともに合宿させ、シュート中心の練習を積ませる「GK+ ストライカー育成プロジェクト」を発足させることを決めた!

 長年サッカー日本代表は得点力不足と言われている。その課題を解消すべく、成果を挙げているスイスを参考にこの「ストライカー育成プロジェクト」が発足され、10月24日から3日間にわたり全国から選抜された14歳〜16歳の18名がJビレッジで合宿を行ったらしい。今後も年に1〜2回開催するそうだ。その合宿の詳しい内容は知らないし、どの程度成果があるかは分からないが、試み自体は非常に面白いものだと思う。
 日本のサッカーにストライカーが不足しているように、野球界では慢性的にスラッガーが不足している。どのチームも外国人打者が中軸に座り、純粋に長打力のある日本人選手だけでクリーンアップを構成しているのはダイエーくらいしか見当たらない。本来はチャンスメーカータイプの選手が3番や4番に入り、「つなぐ4番」という言葉まで生まれてきている(中日・立浪4番はその典型例)。過去5年のホームランキングを見ても、日本人は松井秀喜と中村紀洋だけ。完全にホームランは外国人選手が打つものとなってしまっている感は否めない。
 アマチュア野球の世界でも、目立つのはチャンスメーカータイプばかり。高校野球で本物の怪物クラスのスラッガーは松井秀喜以来出現していない。素質としてはいいものを持っていても、それを伸ばしきれないというケースが妙に多いようにも感じる。
 待っていても出現しないのならば、「ストライカー育成プロジェクト」と同じように育てる努力をしてみたらどうだろうか。若い世代のスラッガー候補を集めて合宿を開き、打撃中心の練習プログラムを実施するのだ。指導者はプロ・アマ問わず、指導力に定評のある人物を集める。そこに召集された選手は、スラッガー候補として選ばれたという意識を持つだけでも、その後のプレーに好影響を及ぼすと思うのだが…。
 スラッガーに限らず、何か野球界全体を挙げてレベルアップを図るような試みをすべきだということは誰もが思っているはずである。プロ・アマの垣根がなくなりつつある現在こそが絶好の改革の時期である。

「長年の夢がかないました。本当に感激しています。」
 昨日、ポスティングシステムによってサンディエゴ・パドレスの入団が決まった大塚晶則のコメントだ。同じ日にニューヨーク・メッツの入団を発表した松井稼頭央も、満面の笑みで喜びを表現していた。今月、木曜‘すぽると!’のキャスターを務めるジャイアンツの上原も「大塚さんも稼頭央も日本では見せないようないい顔してるな〜」とコメントしていたように、メディアもこぞって二人のメジャー移籍を祝福する報道を繰り返していた。
 だが自分は大塚と松井の態度や報道に違和感を覚えた。「メジャーという大舞台にあこがれる」、選手が口にする表現である。だがメジャーに移籍すること自体が夢なのだろうか?そこで活躍してこそ初めて夢がかなったというべきではないのだろうか?

「今までやってきたことが大きく変わるわけではありません。メジャー・リーグ・サッカーに移籍するのならば話は別ですけど」と冗談を交えて答えたのは2000年オフにマリナーズに移籍したイチローである。Jリーグでプレーしていた頃の中田英寿も「海外で成功する自分に興味はあるけれど、海外でプレーするだけの自分に興味はありません」とコメントしている。この二人のコメントからは、アメリカやヨーロッパでプレーすることを夢としてはとらえず、成功することこそが重要という二人の信念が強く伝わってくる。実際二人は移籍1年目から日本でプレーしていたときとは変わらぬパフォーマンスを見せ、完全に認められる存在になっている。
 大塚、松井とも実力的には全く問題ないし、実際に活躍するとは思う。しかしプレーするというだけに満足してしまい、日本で放っていた輝きを失ってしまわないだろうかと一抹の不安を感じずにはいられない。

すっかり…

2003年12月5日
 日記の更新が滞ってしまった。
 気がつけばもう12月。今年のアマチュア観戦も神宮大会で一段落し、すっかりシーズンオフだ。
 最近の野球界の話題と言えば、もっぱらFA組の動向と契約更改が中心だがそんな中で最も話題となっているのは上原(巨人)の代理人問題。先日のスポーツ紙に「巨人の常識は世間の非常識」という見出しがあったが、巨人中心のプロ野球界全体の問題だというのは誰でもわかっているはず。
 もう一つ最近気になったのがメジャー志向の選手の急増。今年は松井稼頭央、大塚、下柳、高津の4人の移籍の可能性が高いが、芝草(日本ハム)、石井(ヤクルト)、岩村(ヤクルト)も来年以降のメジャー移籍をにおわせる発言をしている。もはやこの勢いを止めることは誰にもできない。日本である程度実績を残せば、誰もがアメリカを目指す時代なのだ。
 そのこと自体は喜ばしいのかもしれないが、日本のプロ野球の将来は大丈夫だろうか?早めに何らかの手を打たないと、取り返しのつかないことになると思うのだが…。

 今日は風邪気味であまり頭が回らないので、具体的な改革案はまた今度の機会に。
 ストーブリーグも悪くはないが、やっぱり野球を生で見られない季節はテンションが低い…。
 
 それでは前回に引き続きドラフトの採点を。今日はセリーグです。

阪神
自由枠  鳥谷 敬    内野手  早稲田大
自由枠  筒井 和也   投手   愛知学院大
4巡目  桟原 将司   投手   新日鐵広畑
5巡目  小宮山 慎二  捕手   横浜隼人
6巡目  庄田 隆弘   外野手  シダックス
 優勝の勢いそのままに今年の目玉、鳥谷を獲得。左投手と内角のさばきに課題は残るが、全てのプレーに意欲の感じられる点は非常に素晴らしい。マークされ続けた中でもコンスタントに結果を残すメンタルの強さも大きな武器である。筒井は4年生になってから成績を落としたのが不安。技巧派の枠にはまらず、ストレートに磨きをかけたのはプラス材料。桟原は最速151kmを誇る豪腕サイドスロー。フィールディング、牽制など細かい部分に課題は残るが、阪神にいないタイプなだけに面白い。5巡目の小宮山は大正解。決して大柄ではないが捕手としての総合力、センスは高校生の中でも屈指。力強いバッティングも見所十分で、将来の正捕手を狙える器だ。
高校生は小宮山1人という若さのなさがマイナスだが、全体的にはバランスの取れたいいドラフトだった。90点

中日
1巡目  中川 裕貴  内野手  中京
3巡目  石川 賢   投手   八戸大
4巡目  佐藤 充   投手   日本生命
5巡目  中村 公治  外野手  東北福祉大
6巡目  堂上 剛裕  内野手  愛工大名電
7巡目  川岸 強   投手   トヨタ自動車
8巡目  小川 将俊  捕手   日本通運
 スケールの大きい選手が多く、将来が楽しみな顔ぶれが揃った。昨年の森岡に続き2年続けて高校生野手の1巡目指名。中川は長打力だけでなく守備、走塁にも見所の多い選手。体の強さとフォームの狂いのなさは高校生では間違いなくトップクラス。堂上は中川に比べて粗さが目立つ未完の大器だが、化けた時のスケールは期待できる。中村、小川は守備力に太鼓判が押せるので、1年目からバックアップの戦力として十分に期待できる。レギュラー獲得への課題はどちらもバッティングの確実性。投手の3人は個性がはっきりしており、即戦力として見込めるだけの力はある。適性は石川がストッパー、佐藤が先発、川岸がセットアッパー。
野手は将来性、投手は即戦力と分かりやすい指名。85点

巨人
自由枠  内海 哲也   投手   東京ガス
2巡目  西村 健太郎  投手   広陵
4巡目  平岡 政樹   投手   徳島商
5巡目  岩館 学    内野手  東洋大
6巡目  山本 賢寿   投手   帝京大
7巡目  佐藤 弘祐   捕手   東北
8巡目  南 和彰    投手   福井工大
 7人中5人が投手という狙いのはっきりした指名。本格派がずらりと並び、いかにも巨人が好みそうな顔ぶれとなった。5人とも完成度はまだまだで即戦力は1人もいないが、投手陣の底上げという意味では成功といえる。ここ数年、條辺、真田、林と高卒投手が早い段階から活躍しているのもいい追い風になっている。岩館は内野ならどこでも守れるユーティリティープレイヤーというのが売りだが、持っている能力はかなり高い。器用貧乏にならずに、仁志からレギュラーを奪うくらいの気持ちでやってもらいたい。
外れる可能性の高い選手も多いが、中途半端な即戦力に向かわなかった点は評価できる。75点

ヤクルト
自由枠  川島 亮   投手   八戸大
2巡目  山田 裕司  投手   小松市立
4巡目  青木 宣親  外野手  早稲田大
5巡目  吉田 幸央  投手   城郷
6巡目  佐藤 賢   投手   明治大
 川島は春先の故障で評価を下げたが、実力は馬原と甲乙つけがたいものがある実力派。1年目からローテーションの期待がかかる。山田と吉田は時間はかかりそうだが、将来性は十分。若い投手陣だけに、切磋琢磨して伸びていけば近い将来凄い投手陣が出来上がりそうだ。佐藤は早稲田打線を抑えて一躍評価を上げたが、プロの左打者相手には疑問が残る。吉野(阪神)のように、細かいコントロールと強気の攻めを覚えなければいくら希少なタイプとはいえ苦しいだろう。青木は守備と走塁は文句なし。役割をきっちりこなせるバッティングも評価でき、層の薄い外野陣だけに1年目からの活躍も十分期待できる。
投手に関してはいい指名だったが、レギュラーが高齢化しているだけにもう少し野手にも目を向けてもらいたかった。70点

広島
1巡目  白浜 裕太  捕手   広陵
3巡目  比嘉 寿光  内野手  早稲田大
4巡目  尾形 佳紀  内野手  ホンダ
5巡目  仁部 智   投手   TDK
 12球団で唯一、上位3人が野手という指名。レギュラーが高齢化しているため、野手の底上げという狙いは理解できるが、石原、木村一がいるだけに白浜を無理に1巡目で獲得しなくても良かった。比嘉は4年生になってバッティングが伸びた。潜在能力は鳥谷にも負けていない。甲子園優勝、早稲田の主将と広島には珍しく華やかな道を歩んできたのもプラス材料。尾形は怪我から復帰して、持ち味だった守備、走塁に加えてバッティングも力強さが出てきた。広島のチームカラーにぴったりの選手で、ショートのレギュラー候補。仁部は左の中継ぎが不足しているだけに出番も多いだろう。
これでしばらく捕手の補強はいらないと前向きに考えられなくもないが、マークしていた木村(秋田経法大付)のプロ拒否がやはり痛かった。65点

横浜
自由枠  森 大輔   投手  三菱ふそう川崎
自由枠  吉川 輝昭  投手  日本文理大
4巡目  牛田 成樹  投手  明治大
5巡目  呉本 成徳  内野手 明治大
 広島と並んで最小の4人の指名。一人も高校生を指名しなかったが、ここ数年高校生を多く獲得しているのでそれほど気にはならない。投手は3人とも未完の部分が多いが、横浜にはいないタイプなのは評価できる。森は今年十分な活躍はできなかったが、素質は文句なし。まずは故障をしっかり治すことが仕事だ。吉川は大学選手権の優勝、最優秀投手獲得で一躍脚光を浴びた。抜群の体格からの重い速球が武器の本格派だ。大学ではリリーフが多かったが、意外にフィールディングや牽制も上手く、球種が増えれば先発で使いたい。牛田はフォークが必殺の武器だが、球威がまだ少し物足りない。呉本は攻守とも大学ではいい選手だが、もう一つ個性が欲しい。
 投手陣の底上げという狙いは感じられるまずまずの指名。70点

 振り返ってみると優勝したダイエーと阪神がトップの評価。中日、近鉄、ロッテも面白い指名だった。指名漏れの選手が多く、全体的に指名人数が少なかったのは残念だった。

 指名全71選手の内、実際にプレーを見られたのは57人。テスト入団や海外からの出戻り選手については仕方ないが、来年もできる限り球場に足を運んで指名される選手を見ておきたい。
 指名された選手の細かい感想については、また後日改めて書こうと思う。
 昨日(19日)はドラフト会議。野球小僧編集部で打ち合わせついでにsky-Aの中継で全て見させてもらいました。一大イベントということで、編集部はいつもの3倍近い人の数。指名選手の名前が呼ばれる度に「おお〜っ!」という声があがり、なかなか楽しいドラフト観戦(?)となりました。結局打ち合わせはドラフト中継が終了した後に行われ、ドラフトを見るついでに打ち合わせという感じになってしまったのは言うまでもありません。
 まあそれはさておき、自分なりに各球団の指名を振り返って採点してみたいと思います。まず今日はパリーグから。
    
ダイエー
自由枠  馬原 孝浩  投手   九州共立大
2巡目  城所 龍磨  外野手  中京
4巡目  明石 健志  内野手  山梨学院大付属
5巡目  榎本 敏孝  投手   西淀川
6巡目  金子 圭輔  内野手  志学館
7巡目  三瀬 幸司  投手   NTT西日本中国野球クラブ
8巡目  竹岡 和宏  投手   元ブレーブス3A
 自由枠で今年のNO.1右腕馬原を獲得した時点で及第点。投手陣の若さと勢いは末恐ろしい。2巡目以降は高年齢化してきた野手の補強。野手は全員が高校生だが、将来性抜群の素晴らしい顔ぶれ。特に城所と金子は何度も見たが、スケールの大きさには太鼓判が押せる。チーム事情と将来性を見越した素晴らしい指名。95点

西武
自由枠  山崎 敏   投手   平成国際大
2巡目  黒瀬 春樹  内野手  県岐阜商
4巡目  松川 誉弘  投手   大阪府立港
5巡目  松坂 健太  外野手  東海大仰星
6巡目  岡本 篤志  投手   明治大
7巡目  佐藤 隆彦  捕手   法政大卒
8巡目  杉山 春樹  投手   専修大卒
 山崎は左腕の少ないチーム事情にも合っているし、実力も問題ないと思うが、高いレベル相手にもまれていないのが不安材料。岡本、杉山は本格派の多い投手陣だけに、何か特徴がないと台頭することは難しそう。黒瀬、松坂は実際に見たことがないので何とも言えないが、若手の多い野手陣のいい刺激になりそう。松川は大型サウスポーとして注目だが、もう一人くらい高校生投手を指名してもよかったように思う。悪くはないが全体的に地味な印象の指名。70点

近鉄
自由枠  香月 良太  投手   東芝
2巡目  吉良 俊則  外野手  柳ヶ浦
4巡目  坂 克彦   内野手  常総学院
5巡目  新里 賢   捕手   法政大
6巡目  中本 和希  内野手  近大工学部
7巡目  栗田 雄介  投手   千葉工大卒
 数年前までは人数合わせの逆指名が目立ったが、今年は自由枠で社会人の大物、香月を獲得。不調を引きずってはいるが実力は問題なく、若い投手陣の層が更に厚くなった。できれば先発で使ってもらいたい。吉良と坂は将来の中軸候補。二人ともプレーやフォームに悪いクセがないので、体さえできれば早いうちからの一軍定着も期待できる。新里はバッティングが物足りないが、守備力はアマチュアトップレベル。なかなか固定できない捕手のポジションを狙えるだけの力はある。昨年に続き上位で高校生野手を指名し、「いてまえ打線」復活を目指す意図が非常に感じられる意欲的な指名。85点

ロッテ
1巡目  内 竜也   投手   川崎工
3巡目  杉原 洋   投手   開星
4巡目  田中 雅彦  捕手   近畿大
5巡目  三島 輝史  投手   大阪桐蔭
6巡目  成瀬 善久  投手   横浜
7巡目  藤井 宏海  投手   福井
 過去2年の野手上位指名から打って変わって投手中心の指名。バッテリー強化という目標がはっきりと見てとれた。内、杉原は将来のエースが期待できるだけの器。高卒投手が少ないチームだけに大正解の指名だろう。田中は攻守ともプロではまだまだ物足りないが、大学に入ってから打撃がぐんと向上した順応性の高さには期待できる。成瀬はコントロールとマウンドさばきは高校生離れしているが、やはりもう少しストレートの力やキレを求めてもらいたい。藤井は投手か野手か迷うところだが、どちらでもスター性のある選手なだけに楽しみである。80点

日本ハム
自由枠  糸井 嘉男  投手   近畿大
2巡目  須永 英輝  投手   浦和学院
4巡目  押本 健彦  投手   日産自動車
5巡目  稲田 直人  内野手  JFE西日本
6巡目  金森 敬之  投手   東海大菅生
7巡目  渡部 龍一  捕手   札幌一
 いち早く糸井を自由枠で獲得。即戦力というにはまだ不安だが、持っているポテンシャルは計り知れないものがある本格派らしい本格派。日本ハムにはいないタイプだけに期待できる。2巡目は須永を強行指名。入団は微妙だが、寺原、高井と直前回避が続いただけに、この姿勢は評価できる。高卒のサウスポーが正田と佐々木だけというチーム状況だけに、須永にとってもいいチームだと思うのだが。押本、稲田は即戦力候補。目玉となる選手はいないが、将来性と即戦力のバランスが良くなかなかいい指名だった。80点

オリックス
自由枠  歌藤 達夫   投手   ヤマハ
2巡目  柴田 誠也   投手   北海道尚志学園
4巡目  嶋村 一輝   内野手  九州国際大
5巡目  野村 宏之   投手   近畿大
6巡目  松村 豊司   投手   立命館大
7巡目  小島 昌也   外野手  自由ヶ丘
8巡目  由田 慎太郎  外野手  早稲田大
 2巡目柴田には驚いたが、全体的には例年通りのすぐ使えそうな選手を集めたという印象。現在のチーム状況からすると仕方ない部分もあるが、もう少し将来を見越した選手獲得をするべきだろう(今年に限ったことではないが)。歌藤は先発、リリーフどちらでも使える即戦力候補。「登板機会が多そうだから」という理由でオリックスを選んだところに非常にクレバーさを感じる。嶋村、野村はもっと下でも獲得できた選手。6〜8巡はなかなか上手い指名をしたが、全体的にはやはり物足りない。60点


ということで今日はパリーグまで。セリーグはまた明日。
11月2日(日)は四日市市営球場で高校野球の東海大会を観戦。地元の三重県勢が登場しないということもあり、観客の入りは今ひとつ。第1試合は中京(岐阜1位)vs愛工大名電(愛知3位)。両チームとも言わずと知れた強豪だが、昨年のレギュラーがごっそり抜けたせいか全体的に小粒という印象を受けた。
 まず目に付いたのは中京の先発梶田隼也(1年、右投右打)。ブルペンで投げているときからなかなかストライクが入らず、案の定3回1/3を投げ9四死球7失点という散々の内容だったが、鋭い腕の振りと球威は将来性十分。正に未完の大器という感じだが、身のこなしにセンスがあり、一冬越えたらがらっと変わりそうな雰囲気がある。課題は一にも二にも体力作り。成長した姿を見るのを楽しみにしたい。
 野手では中京のトップバッター、佐藤弦輝(2年、中堅手、右投左打)。運動能力高く、ランニングフォームの美しいいかにも「1番、センター」というタイプの選手だ。特に素晴らしいのがスローイング。コントロールでは先輩の城所龍磨には及ばないが、低くて伸びる軌道の送球は見ごたえ十分。バッティングは重心を前に移動しながら打つタイプ。ヘッドが外から出るのが難点だが、スイングスピード速く積極性もある。内からヘッドが出るようになれば見違えるようなバッターになりそうだ。
 試合は梶田の乱調で序盤から名電が大量リードを奪い、7−0でコールド勝ち。両チームとも2安打ずつと少し物足りない内容の試合だった。

 第2試合は常葉菊川(静岡2位)vs享栄(愛知1位)。何といっても素晴らしかったのが享栄のエース上甲数馬(2年、4番、左投左打)。といってもピッチングではなくバッティングの方である。171cm、67kgと決して大柄ではないが、バットコントロールと対応力は出色。リラックスした構えでコースに逆らわない柔らかいバッティングが持ち味だ。1,2打席と外のボールをきれいに流し打ったかと思うと、3打席目は内角の速球をフルスイングしてライトスタンドまで運ぶ力も見せてくれた。3回からレフトの守備に着いたが、足と肩も悪くない。ぜひ野手として才能を伸ばしてほしい。
 対する常葉菊川はドラフト的視点から見て面白い選手はいなかったが、全員しっかりとセンター返しを心がけたバッティングで享栄の3投手を攻略。7−3で快勝した。

 翌日は近畿大会を見に行く予定だったが、残念ながら雨で中止。仕方なく朝から茨城に帰ることにし、久しぶりの帰省の旅は終わった。
(後から報徳学園の1年生エース片山博視が素晴らしかったと聞かされた。悔しい…)

実家でも…

2003年11月13日
 色々と立て込んですっかり更新が遅れてしまいました。申し訳ありません。今日は帰省先でのどうでもいい話です。

 10月31日(金)の7時過ぎ、無事に実家のある岡崎に到着しました。駅まで中学の野球部のチームメイトだった友達に迎えに来てもらい、そのままお気に入りのラーメン屋で夕食。その友達は大のドラゴンズファンで、会えばいつも野球の話になります。この日は主にドラフトの話題が中心で、「(中日の指名が予想されている)石川(八戸大)と中村(東北福祉大)ってどうなの?」とか「中川(中京)獲るなら城所(中京)も一緒に獲ればいいのに…」などなど二人してすっかり編成会議です(笑)。以前知り合いの方が「俺の知っている愛知県出身者は全員がドラゴンズファンだ」と言っていましたが、確かに中日ファンは多くそして熱狂的です。各テレビ局最低一つはドラゴンズの応援番組を放送しています。ちなみに自分はドラゴンズファンではないのですが、どのチームにどんな選手が必要かという議論は大好きなのですっかり時間を忘れて話しあっていました。まあいつものことですが。

 明けて11月1日は別の友達の結婚式。その友達とは小学校1年生の時からかれこれ17年の付き合いなのですが、タキシード姿が立派で何だか置いていかれたような気持ちになりました…。
この友達も中学の野球部のチームメイトなので、出席者はほとんどが野球つながりで、二次会では自然と昔の野球部での話しになります。まだしみじみするほど年月は経っていませんが、やっぱり昔の仲間と野球の話をできるのは楽しいもんです。

 というわけで今日の結論は、結局どこにいても野球の話をしているということでした。
次こそはちゃんと高校野球の東海大会の話を書きます。

東都大学最終節

2003年11月4日
 先週末から実家にPCを持たずに帰省していたため少し更新が滞ってしまいました。少し整理して書いていきます。

 10月31日(金)は実家(愛知)に帰るついでに、神宮に寄って東都大学を観戦することにした。まずは第二球場にて行われた2部リーグの専修大−国士舘大。負けた方が最下位となり、3部リーグ優勝の大正大との入れ替え戦になる。専修は昨年の秋は1部にいたほどの強豪だが、今季は開幕から引き分けを挟んで6連敗。まさかの最下位決定戦だろう。対する国士舘も1部からは遠ざかっているが、毎シーズン2部の上位を争っており、決して弱いチームではない。
 専修で目に付いたのはトップバッターの照沼大(3年、遊撃手、右投左打、茨城東)。春に見たときも目立っていたが、特にいいのが守備における球際の強さ。深い打球や難しいバウンドもハンブルせずにグラブの芯で捕球できている。少し肩の強さが物足りないがプレーのスピードもあり、大学レベルではかなり上手い部類に入る。バッティングもインコースのさばきが上手く、再三ライト線に鋭い打球を放った。高校時代から期待している長谷川勇也(1年、5番、左翼手、右投左打、酒田南)は手打ちが目立ち足踏み状態。甘い球を簡単に見逃すなど、少しバッティングに迷いが見られた。
 国士舘では2番手で登板した秋葉知一(3年、左投左打、四日市工)。高校時代から何度か見ている選手だが、制球が良くなったのは驚いた。特にカーブは一度浮いてから落ちるように見え、左打者は何度も腰を引いて見送っていた。腕が遅れて出てくるためタイミングも取りづらいが、上のレベルで考えると少し速球の威力が物足りないか。
 試合は専修が先制し、国士舘が追い上げる緊迫した展開。だがどちらも最下位を争っているだけあって、ちぐはぐな攻撃が目立ちなかなか主導権を握れない。9回終わって2−2のところで第一球場の方へ移動した(試合は延長14回、3−2で国士舘が勝利)。

 1部リーグは亜細亜大−青山学院大の最終戦。既に順位は確定しているため(青学は優勝、亜細亜は最下位)青学はエース山岸を温存、亜細亜も来年以降を見越した選手起用が目立った。
 青学で目立ったのは2番手で登板した高市俊(1年、右投右打、帝京)。高校時代は体重移動がぎこちなかったが、だいぶフォームの流れがスムーズになった。横振りだった腕の振りも真上から振れるようになり、ボールの角度も十分。いい意味で先輩の山岸に似た感じのフォームになっている。130km程度のツーシームのようなボールでカウントを稼ぎ、追い込むと140km台のストレートと切れ味抜群のスライダーで勝負するパターンが多い。とにかく変化球が手元で変化するのが大きな長所だ。
 亜細亜大も下級生が数多く登板。中でも目を引いたのは糸数敬作(1年、右投右打、中部商)。一瞬先輩の永川(現広島)かと思うような大きな左足の上げ方のフォームが特徴だが、永川に比べてそれ以降の動作がスムーズだ。まだばらつきはあるものの顔の前でリリースできており、指にかかったときの低めのストレートは見ごたえがある。もう一つ素晴らしいのがカーブ。腕を強く振って投げられており、ブレーキ、落差ともに十分。最近ではあまり見ない“本物の”カーブだ。
 野手では3番に入った荒川大輔(3年、右翼手、右投左打)が攻守に良さを見せつけた。昨年に比べ今年は元気がなかったが、この日は3方向にきれいに打ち分けて4安打。とにかく強いゴロを打とうとする意識が強く、しっかりボールをたたける形もできている。さらに素晴らしいのがライトの守備。落下点に入るまでの速さとスローイングの正確さは東都の中でもトップだろう。171cmと小柄だが、来年はドラフト候補になることは間違いない。
 試合の方は亜細亜が4点を先制するが、中盤以降青学が追い上げ結局5−4で青学がサヨナラ勝ち。今シーズンのチーム状況を象徴するような結果となった。


 そんなわけで金曜は東都を2試合見た後、16時13分の東京発の新幹線で名古屋へと向かいました。次回は帰省先での話に続きます。
 昨日(26日)は首都大学リーグを観戦。普段は一部と二部が同じ球場で試合をすることはないのだが、この日は二部の優勝決定戦と一部の最終節2試合が同時に見られるというお得な日だった。

 第一試合は東経大vs獨協大。東経大の先発はエース高橋陽介(4年、右投、桜美林)。最速151kmを誇る本格派で、昨年の秋には一部でベストナインを受賞している。当然春まではドラフト候補として名前が挙がっていたのだが、最近めっきり評判を聞かないので気になっていた選手だ。初回いきなり先頭打者に四球を与えると送りバントをはさんでまた四球。明らかに春見たときよりも腕が振れていない。制球を気にする→ボールを置きに行く→腕が振れずにまた制球を乱すという完全な悪循環に陥ってしまっているように見えた。以前からの欠点だった左肩の開きの早さも修正されていない。ポツリ、ポツリと伸びのあるボールは来るのだが、それが続かずスピードも140km前後。初回は何とか併殺打でピンチを切り抜けたが、その後も苦しいピッチングが続いた。
 結局5回に東経大が3連打で1点を先制し、高橋がそのまま完封したのだが、これほど内容の悪い完封は珍しいというほどだった。被安打は5本ながら、与えた四死球は7個。8回まで毎回走者を背負い、まさにピンチの連続という展開。獨協大の拙攻に完全に助けられた格好となった。「悪いなりに抑えた」と言ってしまえばそれまでだが、もう少し迫力のあるピッチングを見たかったというのが本音だ。

 第2試合は大東大vs日体大。目に付いたのは日体大先発の下野(2年、右投、東福岡)のピッチング。高校時代から制球の良さには定評があったが、大学に入りさらに磨きがかかった。テンポ良く2球で簡単に追い込み、追い込んでからはボール球を振らせる。速球もびっくりするようなスピードはないが、初速と終速の差が少なく、高校時代よりも威力は増している。しっかり腕を振って投げるチェンジアップも効果は抜群。凄みはなくプロ好みするタイプではないが、正直感心させられる投球内容だった。
 日体大の野手では神貴之(4年、5番、三塁手、右投右打、豊南)と大西亮(3年、1番、遊撃手、右投右打、四日市工)の三遊間コンビの動きの良さが目立ったが、二人とも強烈にアピールするものがもうひとつ。一方の大東大では松堂大輔(4年、3番、右翼手、右投右打、沖縄尚学)の肩に驚かされた。深い当たりのフライをキャッチすると、ワンステップでサードへストライク返球。モーションも素早く、まさに刺せる肩だ。
 試合の方は下野が9回途中まで投げ、11三振を奪う好投を見せ5−3で日体大が勝利。この結果、大東大の最下位が決まった。

 第3試合は城西大vs東海大。城西大が勝てば優勝が決まる大一番である。城西大の先発は前日に続き4年生の小沢太一(右投、花咲徳栄)。サイドスローから最速146kmの速球を投げ込むドラフト候補だ。特徴はなんと言っても左足をステップする位置にある。サードベースとホームベースの中間くらいの方向に踏み出すと、そこから思い切り上体をひねって投げ込んでくるのだ。右打者としては自分の方に体が向かってくるため、どうしても腰が引け気味になる。それでいて荒れ球だから恐怖感は倍増するだろう。だがこの日の小沢は連投の疲れからか今ひとつ球威がなく、3回、4回と東海大打線につかまり4回途中でマウンドを降りる。ボールの角度と威力は面白いと思うのだが、いつ見てもピッチングが単調なのが難点である。一つ緩いボールでカウントが取れるようになると、もっとピッチングの幅が広がると思うのだが。
 城西大で他に目に付いたのはトップバッターの山口祐作(2年、遊撃手、右投左打、生光学園)。打球に対する反応が抜群で、常に前に出てボールをさばこうとする姿勢はすばらしい。バッティングも早めにトップの形を作り、ボールを見る姿勢がきちんとできている。足が速いだけでなく、出塁に対する意欲も強いいかにもトップバッターという選手である。大学生は学年が上がるごとに横着になる選手が多いので、今のプレースタイルを大切にしてもらいたい。
 東海大で光ったのは3番の落合成紀(3年、左翼手、右投左打、報徳学園)、春季リーグの首位打者だ。少し体を開き気味に構えて独特のタイミングの取り方をするが、懐が深くとにかくミートが上手い。バットが内から出ており、難しいボールも簡単に芯でとらえる。特に左方向へのバッティングは芸術的で、ただ流すだけでなく強い打球を打てるのも魅力だ。4番を打つ大松尚逸(3年、中堅手、左投左打、金沢)とともに来年のドラフト候補となることは間違いない。
 試合の方は先制した東海大がそのまま主導権を握り、3−1で勝利。逆転優勝に望みをつないだ。


 ちなみに相模原球場は家からだと2時間半以上かかり、午前9時開始の昨日は家を出たのは5時半、帰宅は21時過ぎというハードなものでした。行き帰りの電車が空いていて爆睡できたのはありがたかったのですが、さすがに疲れました。

個性って…。

2003年10月24日
 普段、アマチュア選手の特徴を表現するときに「プロで言えば誰々」とか「誰々タイプ」などといった表現をすることが多い。自分も人から「イメージ的には誰に近い?」と聞かれることがあるので、観戦メモには似ているタイプの選手を書き込むこともある。

だけどこれっておかしくないだろうか?

 確かにその選手の特徴を知ってもらうためには有効な伝え方だし、フォームやプレースタイルが似ていればそんなに引っかかることもないが、星陵高校に左の強打者が出てくれば「ゴジラ2世」、東北高校に快速サウスポーが現れれば「高井2世」といった具合に、出身学校が同じだからというだけで安易に「〜2世」と表現するのはどうなのだろう?新聞等でこういう表現が多いのだが、大抵の場合“本家”とはタイプが異なっている。もっとしっかりその選手の個性を見てあげないと失礼である。

そんなことを考えていたら高校時代の担任の話を思い出した。

 「個性は英語で“individuality”。つまりdivide(分ける)でないということ。この表現でいくとある人のあれこれを分けていって、分けられないところにあるもの、それが個性ということになる。」
 確かこんな内容だったと思う。これを聞いたとき当たり前のことが妙に納得してしまった覚えがある。つまり選手の特徴を伝えるときもその選手の“分けられないもの”に目を向ければおのずと個性が伝わるということだろうか。まあ実際それが一番難しいと思うのだが、安易に「誰々に似ている」と言われるよりは選手も嬉しいのではないだろうか。

 そこまで考えてふと思った。自分の人間としての“分けられないもの”って何だろう…。年々好き嫌いが少なくなってきているが、それは大人になったのと同時に自分らしさも失われているのではないだろうか。

全て何かに分けられてしまうようにはなりたくないものだが…。

W杯なのに…

2003年10月21日
 最近フジテレビを見ていると伊東美咲とジャニーズの新ユニット「NEWS」が出てきて盛んにバレーボールのW杯をPRしているのを目にする。「バレー=ジャニーズ」というのはもうすっかりお馴染みのパターンだが、毎回今ひとつ盛り上がっていないような気がする…。現在開催中のラグビーW杯もテレビ東京が何とか盛り上げようとしているが、注目度が高いとは言えない。
 とはいえこの2つのW杯については興味はなくても、テレビを見ていれば開催されている(する)ことは十分に伝わってくる。だが現在キューバで野球のW杯が開催中だということはよっぽどの野球好きでなければ知らないだろう。新聞でも結果のみが小さく報道されているだけである(詳しい情報が知りたい方はJABA:日本野球連盟のページをどうぞ)。社会人だけで編成された代表チームとはいえ、W杯というくらいなのだからもう少し何とかならないだろうか。
 
 という話をすると愚痴っぽくなるので報道についてはこれくらいにして結果に目を移そう。今日で一次リーグが終了したが、7戦全勝でBグループ(日本、アメリカ、ブラジル、オランダ、フランス、中国、パナマ、メキシコ)をトップで通過。格下の相手が多いとはいえ、7試合で74得点と打線がなかなか好調のようだ。中でも目を見張る活躍をしているのがトップバッターの草野大輔(ホンダ熊本)と3番に入っている吉浦貴志(日産自動車)。それぞれの一次リーグの成績は草野が26打数10安打(2本塁打)13打点、吉浦が24打数11安打(5本塁打)16打点。
 草野は170cmと小柄だが、パワフルな打撃が持ち味の選手。去年の都市対抗で放った看板直撃のホームランは本当に凄い当たりだった。27歳という年齢がネックになっているが、守備、走塁も含めて実力は間違いなくアマチュアトップクラス、ドラフト指名があってもおかしくないと思っている。一方の吉浦は昨年のインターコンチネンタル杯の代表にも選出されこの2年ドラフト候補に挙がっているが、もう一歩のところで指名を見送られている。打撃、足の速さは問題ないのだが最大の弱点は肩の弱さ。だがこれだけの結果を残しているとなると今年こそ指名があるかもしれない。
 投手陣も今年のドラフト候補の佐藤充(日本生命)、川岸強(トヨタ自動車)、来年の目玉の野間口貴彦(シダックス)など実力派揃い。国際経験豊富なベテランと勢いのある若手のバランスも良く、十分優勝を狙えるだけのメンバーは揃っている。ぜひこのままの勢いで優勝して日本シリーズやオリンピック予選にばかり目が行っているメディアを振り向かせてもらいたいものだ。

天王山3連発!

2003年10月18日
 昨日(17日)、朝9時過ぎに目を覚ましテレビをつけるとレッドソックス−ヤンキースの第7戦が中継されていたので思わず試合終了まで見てしまった。結果はご存知の通りの大熱戦。熱狂的なメジャーリーグフリークというわけでもないが、やはり興奮した。まさかあそこでペドロが打たれるとは…。非科学的なことはあまり言いたくないが、「バンビーノ(ベーブ・ルース)の呪い」恐るべしといったところか。

 今日は神宮球場で東京六大学を観戦。こちらも全勝同士の早稲田−明治の天王山。明治は春のリーグで唯一早稲田に黒星をつけた佐藤賢(4年)を先発に持ってきた。左のサイドスローのうえ、もっさりとした感じのフォームで腕が遅れて出てくるため左打者は特に打ちづらい様子。特に鳥谷は最後までタイミングが合わずに3三振を喫した。クリーンアップで見ても3人で比嘉の1安打だけ、7回を投げ2失点と明治ベンチの狙いはある程度成功したといえる。
 だが打線が毎回の様にランナーを出すが全くつながらなかった。早稲田の先発清水大輔(4年)のスピードは135km程度、変化球もさほどキレがある感じはしないのだがなぜか打ち崩せない。ボール球に手を出す場面が目立ち、チャンスでポップフライというシーンも多かった。結局10奪三振を奪われ完封負け。清水は何とこれで入学以来負けなしのリーグ戦14連勝となった。何度見ても崩れそうで崩れない不思議なピッチャーだ。
 個別に見ていくと一番光ったのは早稲田のトップバッター田中浩康(3年)。堅実な守備としぶといバッティングが売りの選手で今までがどちらかといえば地味な印象だったが、今日は3安打の猛打賞。特にセンターオーバーのスリーベースはバットに上手く乗せた当たりで、長打力もあるところを見せつけられた。4番の比嘉寿光(4年)もゆったりと大きくテークバックを取れるようになったのはプラス材料。右方向に大きな打球を放ち、徐々に長距離砲の才能が開花しつつある雰囲気を感じた。
第2試合の法政−慶應は7回まで観戦したが、大粒の雨と寒さで今ひとつ集中できず。法政の藤田啓至(3年)、西川明(1年)、村上純平(2年)の左打者3人の良さが目立ったが、慶應は攻守に精彩なし。今季もまた一方的な早慶戦になりそうな気がする。

 18時半頃家に帰ると今度は日本シリーズ。どちらを応援しているわけでもないが、何だかんだで見てしまった。斉藤、井川とも調子は今ひとつだったが、絵に描いたようなシーソーゲームの大熱戦。最後は打線の厚みの差が勝負を分けたか。阪神は3〜6番がどうもつながらない雰囲気。明日以降の広沢の起用が一つの鍵になりそうな気がする。井川を6回で代えたのは4戦、7戦の先発も見越してのことだろうが、後半戦の伊良部、下柳では正直ダイエー打線を抑え込むのは難しいだろう。明日負けると一気にダイエーが決めてしまう可能性も出てくる。さすがに2年続けてのsweep(4連勝)は勘弁してもらいたい。


 そんなわけでこの2日でア・リーグ優勝決定戦、東京六大学、日本シリーズと3つの天王山を見たことになる。明日からはワールドシリーズも始まる。レベルは違えどやはり優勝がかかった試合の緊迫感というのは何ともいえない心地よさがある。やらなければならないことはたくさんあるが、明日からも程よく観戦してリフレッシュすることにしよう。

 今日はプロ野球、ストーブリーグの話。パ・リーグは全日程が終了し、セ・リーグも残すところあと2試合。この時期になると各球団から戦力外となる選手やトレード、ドラフト指名候補などが毎日のように発表される。

 そんな中、スポーツ報知のHPを見て驚いた。
“横浜・横山と日本ハム・野中のトレード成立”
一瞬我が目を疑った。横浜は今季の成績不振から多くのトレードを敢行するというもっぱらの噂だったし(実際数日前には近鉄との2対2のトレードが報道されたばかり)、毎年ストッパー候補と言われながら殻を破れないでいる横山にとってはいい機会かもしれない。驚いたのは野中の方である。
 野中信吾。よっぽどの野球ファンでない限り彼の名前は知らないだろう。2001年のドラフト5巡目で指名を受けて佐賀・神崎高校から入団した2年目の内野手だ。昨年は高卒ルーキーながら春季キャンプで一軍に抜擢され、公式戦でヒットも放っている(5打数1安打)。171cmと小柄ながら、シュアなバッティングが持ち味の言うなれば期待の若手だ。そんな選手をあっさりと、たった2年在籍しただけでトレードに出すとは夢にも思っていなかった。
 この野中以外にも、最近ほんの数年在籍しただけでチームを去る選手が多いように思う。戦力外となった選手の中にも「えっ!?」と思う選手が少なくなかった。

巨人・谷浩弥(在籍4年、ドラフト2位)
   石川雅美(在籍2年、ドラフト4巡目)
   山下浩宣(在籍3年、ドラフト6位)
中日・福沢卓宏(在籍4年、ドラフト2位)
   山崎賢太(在籍3年、ドラフト6位)
阪神・岡本浩二(在籍4年、ドラフト3位)
   梶原和隆(在籍2年、ドラフト8巡目)
広島・筒井正也(在籍2年、ドラフト8巡目)
近鉄・松本拓也(在籍5年、ドラフト6位)
オリックス・橋本泰由(在籍2年、ドラフト15巡目)
      藤本博史(在籍2年、ドラフト14巡目)
      高見沢考史(在籍3年、ドラフト6位)
      板倉康弘(在籍2年、ドラフト12巡目)

 巨人・谷は昨年イースタンで最多勝、石川も一軍で登板している。広島・筒井と近鉄・松本はシーズン前はストッパー候補の一人だった。オリックスは全員が契約金0の選手だからある程度予想できなくもなかったが、高見沢は昨年62試合に出場し、打率.279、4本塁打の成績を残している。
 様々な事情があるとは思うが、ちょっと見切りが早過ぎはしないだろうか。少なくとも入団するときは期待されている選手なのだ。高卒なら5年、大卒・社会人でも最低3年は待ってもらいたい。これでは2軍の指導力が問われても仕方がない。
 元プロ選手が社会人でプレーできるようになり、実際そのような選手も増えてはいるがその社会人チームが毎年減っているのである。どんどん受け皿がなくなり、プレーしたくてもできない選手が増えてしまう。
 何だか暗い話になってしまったが、本当になんとかしなければ取り返しのつかないことになるのは目に見えている。才能を開花させる前に野球をあきらめてしまう選手が一人でも少なくなることを切に願う。
 昨日、今日と予定通り郡山開成山球場(福島)で「第8回北海道東北大学野球王座決定戦」を観戦した。見た試合は八戸大vs東農大生産学部、北海学園大vs札幌大(11日)、八戸大vs東北福祉大、北海学園大vs東日本国際大(12日)の4試合。
 最も印象に残ったのは八戸大のエース三木均(3年、右投)。ストレートは最速148kmを記録し、縦のスライダーのキレも抜群。制球も安定し、来年の自由枠候補は間違いないだろう。今年ヤクルトの自由枠が確実視されている川島亮(4年、右投)も昨日の最速は148km。オールローボールの制球力も見事だが、球質の軽さが不安材料か。中日の指名が確実な石川賢(4年、右投)の登板がなかったのは残念だったが、この二人のピッチングが見られただけで福島まで来た甲斐があった。
 野手では東農大生産学部の高木修二(3年、中堅手、右投左打)。去年の大学選手権で見たときよりもバッティングが数段良くなり、三木から2打数2安打1死球。出塁や次の塁を狙う姿勢が凄まじく、来年はもっと騒がれる存在になるだろう。


 と、選手の話はここまで。実はこの二日で一番の衝撃は11日の第2試合で起こった。はっきり言って目に付いた選手は札幌大の先発、谷崎大吾(3年、右投、サイドスロー)だけ。試合も8回を終わって札幌大が6−0と大量リード。球場にも退屈な空気が漂い、普段なら途中で席を立ってもおかしくない展開だった。ただこの日は遠出していたということで“早くホテルに行ってもやることないか…”という気持ちが働き、最後まで見ていくことにした。
 9回表北海学園大の攻撃は代打攻勢、といっても4年生の思い出作りの意味合いの強いもので、先頭からの3連打で2点を返したときもベンチは「完封されなくてよかった〜」という程度の喜び方だった。その後の2人が打ち取られ二死一塁になったときには札幌大ベンチは投球練習をしていた控え投手も引き上げ、整列に向かう準備は万端という雰囲気だった。続く代打の2人がファーストのエラーと四球で出塁し、二死満塁になってもその雰囲気は変わらず1番の海沼功司(3年)がレフトにライナー性の平凡な当たりを打ち上げたときには球場にいる誰もが試合終了だと思った。ところがなんとその当たりをレフトが落球。2人が生還し点差は2点、なおも二死一・三塁となってしまった。
 マウンド上の谷崎は膝に手をつき「まだ終わらないのかよ…」という表情。“ひょっとするとこれは”と思ったのもつかの間、続く2番の度会隆文(3年)が2球目を叩くと打球は右中間を抜けさらに2人が生還。あっという間に同点に追いついてしまった。その後またもや二死一・三塁とすると、このイニング2度目の打席に立った千葉政宏(4年)のフラフラと上がった打球をセカンドがハンブルして逆転。6−2になったときとは明らかに違う喜びを爆発させる北海学園大ベンチとは対照的に完全に凍りつく札幌大ベンチ。この試合の勝者と対戦する東日本国際大ナインも「嘘だろ〜!」と驚きを隠せずに声をあげた。誰が8回までサードベースも踏めなかった打線が6点差を逆転すると想像できただろうか。その裏札幌大も二死一・三塁のチャンスをつかんだが、一度逃した流れは戻らなかった。最後の打者の打ち上げたフライがキャッチャーミットにおさまると決して多くはない北海学園大応援団からは優勝したかのような大歓声が起こった。
 こんな試合1年に1度見られるかどうかである。三木や川島のピッチングに加えてこんな試合まで見られて、本当に福島まで来た甲斐があった。
 付け加えると北海学園大は勢いに乗ったかどうかは?だが、今日の東日本国際大との準決勝にも4−0で勝利し、決勝にコマを進めた。決勝の相手は東北福祉大。戦力的に考えて勝つ可能性は限りなく低いだろう。だが9回に6点差をひっくり返す可能性に比べればずいぶんと高いのも確かである。もし決勝にも勝ち神宮大会に出場するようなことになったらそのときは必ず見に行こうと思う。たとえ大方の予想通り東北福祉大が勝ったとしても、自分はこの試合と北海学園大の名前は死ぬまで忘れないだろう。


第8回北海道東北大学野球王座決定戦、試合結果
10月11日(土)
八戸大3−2東農大生産学部
北海学園大7−6札幌大

10月12日(日)
東北福祉大1−0八戸大
北海学園大4−0東日本国際大
 今日は江戸川球場で行われた秋季都大会、帝京vs明星と日大三vs桐朋の2試合を観戦。
 帝京は東東京、日大三は西東京を代表する強豪チーム。いわば東西の横綱だ。
 そんなわけで平日の昼間にもかかわらず観客席はかなりの人で埋まった。こんな日はいつも「みんな一体何をしている人たちなんだろう?」(自分のことは棚に上げて…)と思ってしまうが、この高校野球人気がある間は日本の野球界は大丈夫だとうれしい気分にもなる。

 そんなことはさておき試合の話を。
 帝京は例年通り体格のいい選手をずらりと揃え迫力は十分だったが、特に目にとまったのはエースの上野大樹(2年)だけ。1年生からマウンドを任せられているだけあって全く危なげないピッチングを見せたが、特筆すべきはシュート。高校生には珍しく、鋭く曲がるのがはっきりと見てとれ決め球としても十分に威力を発揮した。少し体重が後ろに残り開きが早いのは難点で凄みには欠けるが、制球良く変化球でカウントが取れるため高校生レベルでは十分好投手といえる。7回を投げ被安打2、四死球0で完封。バッティングも(打順は3番)インパクトの強い振りで4打点と活躍した。
 だがそんな上野よりも魅力を感じたのが敗れた明星のエース中山博之(1年)。初回の初球を見ただけで背筋がぞくっとした。細身だがシャープな腕の振りで、とにかく手元でボールが落ちない。高めは特にミットをはねあげるようなのびがある。この日の最速は132km(上野は135km)だったがおそらく初速と終速の差が小さいタイプなのだろう、帝京打線はことごとくつまらされ、まともにとらえた打球はほとんどなかった。最後は四球とエラーから自滅したが、来年以降が本当に楽しみなピッチャーである(試合は8−0で帝京が7回コールド勝ち)。

 第2試合は結果から先に言うと桐朋が7回コールド7−0で日大三を下し、大金星をあげた。新聞で結果だけ見た人はさぞびっくりすることだろう。中には「今年の日大三は弱いんだな」と思う人も多いはずである。だが決してそんなことはない。試合前のシートノックを見た時点では「日大三がコールドで勝つな」と思った人がほとんどだろう。それほど日大三の選手の動き、肩の強さは素晴らしいものがあり、桐朋との力の差は歴然としていた。特に現在の1年生は2000年の夏の全国優勝を見て入学してきたメンバーである。レベルが高いのは当然だ。ショートの千田隆之、セカンドの中山怜大など好素材はごろごろいた。それでも何が起こるかわからないのが野球である。2回、桐朋は日大三先発の小田和範(2年)の乱調につけこみ5点を先制すると3回にも2点を追加。記録を見れば9安打7得点の快勝だが、ヒットのほとんどは野手の間に落ちるようなラッキーなもの。そしてランナーがたまったところで長打が出るという漫画でも見ているような展開だった。
 もちろん桐朋にも勝つだけの要因はあった。それがエース林祥央(2年)の存在である。夏から桐朋にいいピッチャーがいるとは聞いていたが、今日も日大三打線を3安打に封じ込め噂にたがわぬピッチングを披露してくれた。最大の長所は腕の振り。テークバックでスムーズに肘が高く上がり、ひっかかるようなところがない。ボールの角度、キレも現時点では申し分ない。そして二つ目に素晴らしいのがカーブ。落差、ブレーキはもちろんのこと、腕をしっかり振って投げてくるためバッターはたまらない。近年、スライダーを多投してカーブのキレを失う選手が多いので、何とか今のカーブを大切にしてほしいものである。もちろん欠点もある。右足の蹴りが弱く、しっかりと体重を右足に乗せ切れていないのだ。だがそれも致命的なものではなく、順調に成長を続ければ将来プロを狙える投手であることは間違いないだろう。

 結局のところ今日は帝京、日大三を目当てにしていながら、心を奪われたのは明星の中山と桐朋の林だった。だが実はお目当ての選手が期待通りに活躍したときよりも、こんな日のほうが嬉しかったりするものである。
 週末は郡山で行われる北海道東北大学王座決定戦を見に行く。お目当てはもちろん八戸大の川島、石川、三木、東北福祉大の中村、塩川、福田らである。だがそんな中でもきっと名前を知らなかったような選手に巡り合うことを期待してわくわくしている。

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